2024年の3月末に、長く務めた職場を退職しました。当時を振り返り、子育てと仕事の両立について思ったことや、退職までの周囲の反応などを書いてみました。
わたしが退職を希望した理由
①子育てと仕事の両立に限界を感じたから
フルタイム勤務だったので、週5日間は、8時間以上、通勤や休憩時間を含めると10時間ほど職場に拘束されていました。どこの共働き家庭でも同じ状況だと思いますが、余白の時間がないので、毎日の生活をこなすことに精いっぱいの日々。家事や子育てを夫婦で分担することでどうにか過ごしていましたが、日々「もう少し子どもとゆっくり関わりたいけど…」「もう少し残業したいけど…」と子育てと仕事の間で葛藤していました。より子育ての方に時間を割きたいと思うようになったのは、長男が小学校に入学してから。「子どもたちにとっての小1の壁」という記事で書きましたが、我が子にとっては、保育園生活よりも小学校生活の方がストレスフルだったようです。
手をかけられる時期に子どもたちともっと関わりたい、という思いがより強まり、退職を考えるようになりました。今後、仕事を再開するにしても、パート勤務など、家庭生活に時間を割りふりやすい働き方を選ぶと思います。
②住宅ローン完済の目途がついたから
我が家は2017年に家を建て、20年の住宅ローンを組みました。共働き時の家計分担は、夫が生活費、わたしが住宅ローンと、かなりざっくりと管理していました。当初、10年間は住宅ローン控除があるため定額で返済しつつ、控除の期間が過ぎたらできる範囲で繰り上げ返済する計画でした。そんな中、わたしが退職について相談し始めたため、まっさきに夫に言われたのが「住宅ローンが終わってからにしてね」という一言です。そこで、住宅ローンの残高やその時点で繰り上げ返済できる金額を計算したところ、退職を考えた時点だとギリギリ返済できるかどうかでした。翌年あと1年働けば、少し余裕を持って住宅ローンが完済できるとわかったのです。そこで、後1年働いてから退職すると決意が固まりました。
上司への早めの相談、退職時期は後任が決まりやすい時期に
後任の人事のことがあるため、年度末の退職が望ましい職場でした。人事の検討が始まる秋に、上司に退職を検討していると相談しました。結果的には、引き止められたのと、先に書いた住宅ローンの事情があり、その年の年度末には退職できず、翌年の年度末まで働くことになります。
退職を希望する理由は、「我が子の育児に専念したい」という言葉でお伝えしました。本音が、例えば職場への不満などネガティブなものであったとしても、このような場面ではできるだけ前向きな表現にする方がいいそうです。管理職は、このような場面ではどうにか引き留めようとしてきます。資格が必要な職種で後任が決まりにくいことも関係してか、とりあえずあと1年勤めてから考え直してほしいと言われました。職場で配慮できることはないか、とか、収入が減ると生活が大変になるのではないかなど、お説教されているわけではないのですが、いろいろ追及され重々しい時間でした。結局この日は、「家族と再度相談させてください」とお返事し、後日、住宅ローンのこともあったため、後1年は続ける意向をお伝えに行きました。そして、翌年の秋に「1年よく考えた結果、やはり退職したい」と再度申し出ました。1度目の相談後に、さらに上の上司へも報告がいっていたらしく、このときはすんなりと了承してもらえました。
労基法では、退職を希望する2週間前までに口頭や文書で申し出ればよいとされていますが、円満退職を目指す場合、早めに相談することと、後任が見つかりやすい時期などは配慮した方がよいと思います。わたしの場合、最初の相談から1年続けることとなりましたが、最後の1年の人事では、兼務していた役職を他の人につけてもらうなどの配慮をしてもらえました。結果、1人で抱えこんでいた業務も他にわかる人を残して退職できる形となり、よかったと思っています。退職を希望していることを伝えた後、働きにくいと感じるケースもあるようですが、わたしの場合は、特に不利益を感じることはありませんでした。逆に、自分の意志は伝えてあると思うと、すっきりした気持ちで残りの1年を過ごすことができました。育休をとらせてもらったことなど、職場への恩義も感じていたため、できることはやりきってから去りたいと思っていたので、引継ぎや職場の整理等を1年かけてやれたこともよかったです。
周囲の人たちにいつ伝えるのか
同僚には、ぎりぎりまで公表しませんでした。引っ越しなど、はっきりした退職理由があれば早い段階でも伝えやすかったのかもしれませんが、「子育てに専念したい」という理由で退職するとは、なんとなく言いだしにくかったのです。退職を伝えたとき、同じく子育てまっさい中の同僚からは、「なんかショック」「わたしも考えさせられる」ということを結構言われました。子育てと仕事の両立に葛藤し、悩みながら毎日を過ごしていることは、皆かわりないのだと思います。
職場外の仕事関係の方々には、直接お伝えすることができずに、退職する数週間前にメールで退職のご挨拶をすることになりました。今思うと、秋には年度末の退職が内定していたわけで、秋以降の最後にお会いした機会に、こっそりとご挨拶をしておけばよかったなと振り返ります。
退職の相談をしたときに職場の先輩方から言われたこと
退職を検討していた時期、職場の親しい先輩数名に相談する機会がありました。結果、どの先輩にも、経済的な理由から辞めない方がいいと引き止められました。子どもが大きくなるほどお金が必要になる、40過ぎて就職活動をしても今のような待遇では雇ってもらえない、ということです。これは、本当にその通りですよね。実際、わたしは夫とほぼ同じ額の給与をいただいていたので、我が家の家計は半分になってしまいました。今後、再就職したとして、同じ待遇で雇用してもらえるとは思っていません。わたしが相談した先輩方はみな、育児と家事を両立しながら、仕事を辞めたいと思いながらも続けてきて、結果、経済的によかったという経験をされているからこそ言ってくださったのだと思います。でも逆に、子育てに専念したくて退職した経験がある人にわたしが相談していたとしたら、「子どもと一緒に過ごせた時間はお金には変えがたい」ということを言われたのではないでしょうか。仕事と子育て、どちらに重点を置きたいかというのは、価値観の違いでしかありません。今、専業主婦世帯よりも共働き世帯の方が圧倒的に多くなっているのは、子育てにお金がかかりすぎるという実態があるために、やむを得ず共働きという選択をとっている人も多いからだと思います。やむを得ずではなく、本当に女性が望む選択ができるような世の中でないと、少子化はとまらないでしょう。
わたしの場合、退職を希望してから実現するまでに1年半かかってしまいました。それでも、たくさん時間をかけたぶん、思い残しや後悔はありません。少しでも、退職を検討している方の参考になれば幸いです。